
※画像出典:FNNプライムオンライン
後期高齢者医療制度の保険料の上限額引き上げなどを盛り込んだ「改正健康保険法」は参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。出産育児一時金の「財源」の一部を捻出する為に「一定の収入」を条件に段階的に上限額を引き上げます。また「かかりつけ医」の情報公開を強化します。
■75歳医療保険料引き上げ 改正健保法が成立
https://nordot.app/1029591116678546320?c=39550187727945729
共同通信 2023/05/12
75歳以上の公的医療保険料を2024年度から段階的に上げる健康保険法などの改正案が12日、参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。約4割が引き上げ対象者となる。高齢化に伴う医療費増に対応するのが主な狙い。子どもを産んだ人に給付する「出産育児一時金」の財源にも充当する。
■社説:改正健保法成立 全世代型の負担に理解求めよ
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20230516-OYT1T50312/
読売新聞オンライン 2023/05/17 05:00
後期高齢者医療制度を支える現役世代に、重い負荷がかかっている。政府は高齢者に丁寧に説明し、負担増への協力を求めることが大切だ。
改正健康保険法が成立した。75歳以上が加入している後期高齢者医療制度の保険料を引き上げることが柱だ。
高齢者の医療費は、全体で年間44兆円に上る医療費の4割近くを占めている。戦後生まれの「団塊の世代」は75歳を迎え、2025年には、全員が後期高齢者医療制度に移行することになる。
医療費は今後も増え続ける見通しだ。制度の持続可能性を高めるには不断の改革が欠かせない。
改正健康保険法「自公国」の賛成多数で可決・成立!
2023年04月19日(水)。参議院本会議。75歳以上の加入する「後期高齢者医療制度」の保険料の上限額引き上げを柱にした「健康保険法」などの改正案は同日、趣旨説明と質疑を行った上で審議入りしました。これは岸田政権の掲げる「全世代型社会保障改革」の一環です。
岸田文雄首相は答弁で「本格的な少子高齢化時代を迎える中、全世代が能力に応じて社会保障制度を支え合う仕組みを構築することが重要」と強調しました。尚、健康保険法などの改正案は4月13日(木)の衆議院本会議で「自民党」「公明党」「国民民主党」の賛成多数で可決しています。
2023年05月11日(木)。参議院厚生労働委員会。健康保険法などの改正案は「自民党」「公明党」「国民民主党」の賛成多数で可決しました。翌日の参議院本会議で採決、可決・成立する見通しです。一方で、立憲民主党や日本共産党などは「後期高齢者の家計をおびやかす内容で容認できない」と反対しました。
2023年05月12日(金)。参議院本会議。改正健康保険法は「自民党」「公明党」「国民民主党」などの賛成多数で可決・成立しました。一方で、立憲民主党、日本共産党、日本維新の会は「高齢者の負担増ばかり優先されている」として反対に回っています。
国民健康保険の保険料を出産前後4カ月間免除!
いわゆる「出産育児一時金」の財源の一部を捻出する為に「一定の収入」を条件に後期高齢者医療制度の保険料の上限額を段階的に引き上げます。
また、子育て世帯の負担を軽減する為に、自営業者などの加入する「国民健康保険」について、2024年以降、加入者女性の支払う保険料を出産前後の4カ月間、免除する措置を盛り込んでいます。
窓口負担分を除く後期高齢者医療費の約4割は現役世代の保険料で賄われています。こうした負担の緩和目的の他に、地域医療充実の為に「かかりつけ医」の役割や機能を法定化しました。かかりつけ医の担う役割について全国の都道府県知事に報告するように医療機関に求める制度を創設します。
管理人後記!
改正健康保険法は現役世代だけでなく「すべての年代」で社会保障制度を支え合う「全世代型社会保障改革」の一環です。出産育児一時金は今年4月に42万円⇒50万円に増額しました。財源は年間3千億円規模で大半を現役世代の医療保険料などで賄っています。
保険料の引き上げは年金収入で「153万円」を超える人を対象にしています。年間上限額を66万円⇒80万円に見直しました。75歳以上の約4割はこれに該当します。施行は2024年度で段階的に負担を増やします。
厚生労働省の試算によれば、年金収入で年200万円の場合、年間の保険料は3900円増えて「9万700円」になります。後期高齢者医療制度は、窓口負担を除いた約17兆円の年間医療費の内、1割を後期高齢者の保険料、4割を現役世代の後期高齢者支援金、5割を公費で賄っています。
1人当たりの保険料は2002年の制度創設以降、後期高齢者は2割増えたのに対して現役世代は「7割」増えています。今回の法改正で現役世代の負担を過度に増やさないように過後期高齢者と現役世代の保険料の伸び率を同程度にしました。
一方で、低所得層には今回の制度改正で新たな負担は発生しません。ギリギリで踏み止まった印象です。
また、65歳~74歳の前期高齢者の医療費に対する現役世代の支援金を見直しました。大企業の健康保険組合に加入する人の負担は増えている中で、中小企業の従業員らで加入する「全国健康保険協会」は負担は減っています。
賃金に応じて負担を増やして保険者間での負担の均衡を図りました。此方は一歩間違えれば(後者の)負担増を招くので要注意です。
日本の少子高齢化は深刻です。しかし、安易に高齢者VS現役世代の分断を煽る風潮は非常に危険です。当ブログでは再三指摘しているように、後期高齢者の負担増はそれを支える「家族」の負担増に繋がる可能性は高いです。
高齢者の負担増は現役世代に、現役世代の負担増はその下の世代に重く圧し掛かります。将来的に「介護離職」「老後破産」「下流老人」の増加を招くリスクを孕んでいます。なし崩し的に負担増になる可能性は高いので反対の意思を示しておくべきです。




